※本記事は特定の暗号資産の購入を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。
「ビットコインは危険」——そう聞いたことがあるはずです。でも、”どれくらい”危険なのか、数字で答えられる人は多くありません。
結論から言うと、危険の正体は値動きの大きさです。ビットコインの年率ボラティリティは、直近1年で43.5%。同じ期間の株式(S&P500)は12.8%、債券(AGG)は3.8%でした。株式のおよそ3.4倍、債券のおよそ11倍のばらつきがあります。
しかもそれには、24時間動き続ける市場や、価格を測る共通の物差しが無いことなど、構造的な理由があります。
この記事では、日次データを自分で取得・計算し、ビットコイン・株式・債券を横並びで比較します。感覚ではなく、数字で「怖さの正体」を確認していきましょう。
「危険」と言われる理由を、感情ではなく数字で見る
「怪しい」「危ない」という言葉だけでは、判断のしようがありません。何がどれくらい危ないのか分からなければ、怖がるべきなのか、気にしすぎなのかも決められないからです。
投資の世界では、この「危なさ」を”ばらつき”として測ります。値動きの振れ幅が大きいほど、リスクが高いと考えるのが基本の発想です。振れ幅さえ分かれば、自分がそれに耐えられるかどうかを、感覚ではなく判断として決められます。
怖がるのは自然なことです。ただ、測れば判断できる。この記事はそのための数字を用意しました。
自分でデータを取って計算しました
この記事の数字は、他サイトからの引用ではありません。ビットコイン(BTC-USD)、S&P500(^GSPC)、債券ETF(AGG)の日次終値を取得し、自分でボラティリティ・最大下落率・分布の形を計算しています。
データ期間は2020年7月〜2026年7月(直近5年、Yahoo Finance日次終値ベース)。期間を変えれば数値も変わるため、直近1年・3年・5年の3パターンを併記します。
値動きの大きさをどう測るか——ボラティリティという指標
ボラティリティ(標準偏差)とは何か
ボラティリティ=日々の値動きが、平均からどれくらい散らばっているかを示す指標です。散らばりが大きいほど、「良い日」と「悪い日」の差が激しいということになります。
日々の値動き(リターン)のばらつきを計算し、それを1年分に引き伸ばしたものが「年率ボラティリティ」です。引き伸ばす倍率は「1年に何回、値動きが記録されるか」で決まります。株式・債券は取引日(年間約252日)なので√252倍、ビットコインは土日も休まず動くため年間約365日分、√365倍を使います。この違いを無視して全資産に√252を使うと、ビットコインのボラティリティが実際より2割ほど低く出てしまうため、この記事では資産ごとに使い分けています。
なぜ「平均リターン」だけ見てはいけないか
同じ「平均年率5%」の資産が2つあったとして、一方は毎年安定して5%前後、もう一方は+40%の年もあれば-30%の年もある、という場合、平均は同じでも体験はまったく違います。後者を持ち続けるには、下がった時に耐えられるかどうかが重要になります。
ビットコインは、まさにこの「平均は良くても、振れ幅が大きい」資産の代表格です(「積立なら平均化されて安心」という話が本当なのかは、別の記事で改めて検証する予定です)。
ビットコイン・株式・債券を数字で並べる
ここがこの記事の核心です。実際に計算した数字を、期間別に並べます。
年率ボラティリティ
| 資産 | 1年 | 3年 | 5年 |
|---|---|---|---|
| ビットコイン | 43.5% | 46.7% | 52.5% |
| 株式(S&P500) | 12.8% | 15.0% | 17.0% |
| 債券(AGG) | 3.8% | 5.3% | 6.1% |
(出典:Yahoo Finance日次終値、2026年7月30日時点。ビットコインはBTC-USD、株式はS&P500指数、債券はiShares Core US Aggregate Bond ETF〈AGG〉。計算方法:日次対数リターンの標準偏差を年率換算〈ビットコインは√365、株式・債券は√252〉)

どの期間で見ても、ビットコインのボラティリティは株式のおよそ3倍、債券の9〜11倍です。
最大ドローダウンの比較
標準偏差より体感に近いのが、「ピークからどれだけ下がったか」を示す最大ドローダウンです。
| 資産 | 1年 | 3年 | 5年 |
|---|---|---|---|
| ビットコイン | -53.1% | -53.1% | -76.6% |
| 株式(S&P500) | -9.1% | -18.9% | -25.4% |
| 債券(AGG) | -2.8% | -5.4% | -17.8% |
直近5年で見ると、ビットコインは一時、資産価値の4分の3以上が失われた局面(2021年11月の高値→2022年11月の安値、-76.6%)がありました。株式も5年スパンでは-25%程度の下落を経験していますが、規模がまったく違います。
なお、今回のデータ期間(2020年7月〜)より前を含めると、ビットコインはさらに大きな下落を経験しています。取得できる最も古いデータ(2014年9月〜)まで遡ると、2017年12月の高値から2018年12月の安値にかけて-83.4%という下落を記録しました。今回の5年間の数字(-76.6%)は、実際にはまだ”控えめな”部類に入る可能性がある、ということです。
この数字を見て「やっぱり危ない」と感じたなら、その感覚は正しいです。問題は、この危なさに自分が耐えられるかどうかを、事前に決めているかどうかです(付き合い方は後で扱います)。
標準偏差だけでは足りない——ファットテールの問題
さらに厄介なことがあります。値動きの分布が正規分布からどれだけ外れているかを示す「尖度」という指標があります。正規分布ならゼロになる数値で、大きいほど「極端な値動きが起きやすい(裾が厚い)」ことを意味します。
超過尖度(正規分布を0とした場合の値)
| 資産 | 1年 | 3年 | 5年 |
|---|---|---|---|
| ビットコイン | 7.03 | 3.64 | 4.19 |
| 株式(S&P500) | 1.24 | 14.49 | 6.40 |
| 債券(AGG) | 0.64 | 0.98 | 1.48 |
正直に書きます。「ビットコインが常に一番裾が厚い」とは言い切れません。3年で見ると、S&P500の尖度(14.49)はビットコイン(3.64)を大きく上回っています。
理由を調べると、2025年4月上旬のわずか数日間(単日+9.09%を含む急変動)に数値が強く引きずられていました。実際、この1日を除いて計算し直すと、S&P500の尖度は14.49→5.12まで下がります。尖度は、ごく短い期間に起きた数日の値動きだけで大きく変わる、不安定な指標だということです。この性質は1年の推定値ほど極端ではありませんが、3年でも起こりえます。
この不安定さを踏まえたうえで言えるのは、次の2点です。
- 株式市場も「裾が薄い」わけではない。ビットコインだけが特別ではない
- ビットコインの本当の特徴は、尖度の高さそのものより、ボラティリティの絶対水準が株式・債券より一段大きいこと(前節の表の通り)
標準偏差だけでリスクを見積もると、どの資産でも「想定より極端な値動き」が起きうる——これは暗号資産に限った注意点ではありません。

なぜここまで大きく動くのか——5つの構造的な理由
数字を見た後は、「なぜ」に答える番です。
1. 24時間365日、止まらない市場 株式市場には取引時間と休場があります。夜間や週末に起きたニュースを消化する「間」があるということです。ビットコインは違います。24時間、値幅制限もサーキットブレーカーも無いまま動き続けます。
2. 価値を測る基準がない 株式には利益や配当があり、PER(株価収益率)のような目安があります。ビットコインにはキャッシュフローがありません。価格は、将来への期待だけで決まります。「割高か割安か」を測る共通の物差しが無いと、価格は動きやすくなります。
3. 市場規模が相対的に小さい 株式市場全体と比べると、暗号資産市場はまだ規模が小さい状態です。同じ金額の資金が出入りしても、市場が小さいほど価格への影響は大きくなります。
4. レバレッジ取引と強制決済の連鎖 価格が下がると、レバレッジをかけていたポジションが強制決済され、それがさらなる下落を招くことがあります。「大きな値動きの後には、また大きな値動きが起きやすい」という現象(ボラティリティ・クラスタリング)が知られており、これが先述のファットテールの一因とも考えられています。
5. 規制ニュースへの感応度 制度がまだ固まっていない分、各国の規制方針や政策発表ひとつで、価格が大きく動くことがあります。
これらはどれも「危ないから買うな」でも「怖くないから大丈夫」でもありません。構造を知っておけば、次に大きく動いた時も、慌てずに「ああ、これか」と受け止められる、というだけの話です。
値動きが大きい資産と、どう付き合うか
ここまでの数字を踏まえると、ビットコインは株式や債券とは別次元の値動きをする資産だと分かります。ただし、値動きが大きいこと自体は、良いことでも悪いことでもありません。重要なのは、自分がその振れ幅に耐えられるかどうかです。
考える順番はシンプルです。①いくらまでなら下がっても受け入れられるか(許容できる下落額)を先に決める。②そこから逆算して、投資する金額を決める。順番を逆にしない、というだけのことです。
「いくらまで入れるべきか」の具体的な考え方や、資産全体の中でどう位置づけるか(分散投資になるのか)は、それぞれ別の記事で扱う予定です。
まとめ
- ビットコインの年率ボラティリティは、株式のおよそ3倍、債券の9〜11倍(取引日数の違い〈365日 vs 252日〉を考慮して計算)
- 最大ドローダウンは直近5年で-76.6%、2014年以降では-83.4%を記録。標準偏差だけでは測れない極端な値動きも起きうる
- 裾の厚さ(ファットテール)は暗号資産だけの特徴ではなく、株式市場にも十分にある。ビットコインの本質的な違いはボラティリティの絶対水準の高さ
- 危なさの正体は、24時間動き続ける市場・価値の物差しの不在など、構造的な理由がある
まずは、自分がどこまでの下落に耐えられるかを、数字で考えてみてください。
※本記事は公開情報および統計データに基づく情報提供を目的としたものであり、特定の暗号資産や金融商品の購入・売却を勧誘するものではありません。 ※暗号資産は価格変動が大きく、元本は保証されません。投資判断は必ずご自身の責任で行ってください。 ※記載の数値は2026年7月30日時点のデータに基づきます。最新情報は各公式サイトをご確認ください。 ※取引は金融庁に登録された暗号資産交換業者をご利用ください。


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