※本記事は特定の暗号資産の購入を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。
「ビットコインは株と違う値動きをするから、分散投資になる」——そう聞いたことがあるはずです。
結論を先に、正直に書きます。この考え方は、以前より成り立ちにくくなっています。 株式(S&P500)とビットコインの日次リターンの相関係数は、直近1年で0.50。無相関(0)からは離れており、近年は上昇傾向にあります。
この記事では、分散投資の効果がどういう仕組みで決まるのかを確認したうえで、実際に自分でデータを計算し、「分散のために暗号資産を持つ」という理由がどこまで成立するのかを検証します。
そもそも「分散投資」はなぜ効くのか
1つのカゴに盛らない、を数字で言うと
値動きの異なる資産を組み合わせると、資産全体のばらつき(リスク)が下がります。片方が下がっている時に、もう片方が下がらなければ、痛みが薄まるからです。
効き目を決めるのは「相関」という一点
ここでの”値動きが違う”を数字にしたものが相関係数です。2つの資産が「一緒に動く」度合いを、-1(逆方向にきれいに動く)から+1(まったく同じ方向に動く)で表します。
✅相関が低い(または負)ほど、分散効果は大きい ✅相関が高い(+1に近い)ほど、組み合わせてもばらつきは下がらない

つまり、分散投資が効くかどうかは、突き詰めると「相関がどれだけ低いか」の一点にかかっています。
相関が高いと、分散効果は消える
同じ方向に動く資産を2つ持っても、リスクは分散されません。極端な例で言えば、同じ指数に連動する商品を2つ持っても、それは分散ではなく単なる重複です。
暗号資産が本当に分散投資になるかどうかは、「株とどれだけ違う動きをするか」——つまり「株との相関がどれだけ低いか」にかかっています。ここからは、それを実際の数字で確認します。
暗号資産と株式の相関は、実際どうなのか
ここがこの記事の核心です。ビットコイン(BTC-USD)とS&P500(^GSPC)の日次リターンを取得し、自分で相関係数を計算しました。
相関係数で見る
| 期間 | 相関係数 |
|---|---|
| 全期間(2020年8月〜2026年7月、約6年) | 0.38 |
| 直近3年 | 0.36 |
| 直近1年 | 0.50 |
(出典:Yahoo Finance日次終値。計算方法:日次対数リターンのピアソン相関係数。株式の休場日を除いた共通の取引日〈1,505日〉のみで算出)
無相関(0)からはどの期間でも離れており、直近1年ではより明確な正の相関が見られます。
近年、相関は上昇傾向にある
期間を1つの数字にまとめると見えなくなるものがあるので、90日ごとの移動相関(ローリング相関)で時系列の変化も確認しました。
年別の平均90日ローリング相関
| 年 | 相関係数 |
|---|---|
| 2020年 | 0.28 |
| 2021年 | 0.29 |
| 2022年 | 0.53 |
| 2023年 | 0.28 |
| 2024年 | 0.28 |
| 2025年 | 0.43 |
| 2026年(〜7月) | 0.52 |

正直に書くと、きれいな右肩上がりではありません。2022年に一度大きく上昇し(0.53)、2023〜2024年は2020〜2021年並みの水準(0.28前後)に戻り、2025年以降に再び上昇しています(0.43〜0.52)。90日ローリング相関の振れ幅も大きく、最小-0.03(2024年2月)から最大0.65(2022年7月)まで動いています。
ただし、直近2年(2025〜2026年)の水準は、2020〜2021年の”分散になりそう”だった時期よりも明確に高い状態です。機関投資家の参入が進み、暗号資産が株式と同じ「リスク資産」として扱われる場面が増えている、という見方と整合的です。
「株と別の動きをするから分散になる」という前提は、以前より成り立ちにくくなっている、というのがここまでの正直な結論です。
最悪のタイミングで一緒に落ちることがある
分散投資として一番困るのは、「株が大きく下がる、まさにその日に、暗号資産も一緒に下がる」ケースです。これを確認するため、S&P500の日次リターンが下位5%(76日、-1.65%以下の下落日)だった日を抜き出しました。
- この急落日にビットコインも同時にマイナスだった割合:86.8%
- 急落日のビットコインの平均リターン:-4.05%

散布図にすると分かりやすいのですが、S&P500が下位5%に沈んだ日(オレンジ・緑の点)は、ほとんどが右下がりの位置——つまりビットコインも同時にマイナスだった場所に集まっています。
10回中9回近く、株が大きく下がった日にビットコインも一緒に下がっていました。「分散のつもりで持っていたのに、一番効いてほしい局面で一緒に下がった」ということが起こりうる、ということです。
統計的な注意点: 実は、この急落日だけを取り出して相関係数を計算すると0.15で、通常日の相関(0.29)より低く出ます。一見矛盾するようですが、これは片方の変数(S&P500)を極端な範囲に絞り込むと相関係数自体が不安定になりやすいという、統計的によくある現象です。「相関係数」よりも「急落日に実際どちらに動いたか」という素朴な集計の方が、この文脈では実感に近い答えを教えてくれます。
では「分散のために買う」は成立するのか
「分散効果」だけを理由にするのは、根拠が弱い
相関が上昇している以上、「暗号資産は株と別の動きをするから分散になる」という教科書的な理由づけは、以前ほど強くありません。分散効果だけを理由にした購入は、積極的には勧めにくいというのが正直なところです。
それでも保有を検討する余地があるとすれば
分散”以外”の理由であれば、検討の余地はあります。たとえば:
- ごく少額を、資産全体の中で”試す”位置づけとして持つ
- 長期的な技術・普及への期待(ただし不確実性が高いことは明記しておきます)
いずれも「分散のため」という理由づけとは別物です。特定の配分割合をここで推奨することはしません。
結論は人によって変わる
「分散目的なら、暗号資産は必ずしも必要ない」という結論も、十分に合理的です。大事なのは、”分散になるから”以外に、自分の中に理由があるかどうかです。
値動きの大きさそのものについては、こちらの記事で検証しています。「いくらまで入れるべきか」の考え方は、別の記事で扱う予定です。
まとめ
- 分散投資の効果は「相関」の一点で決まる。相関が高いほど分散効果は小さい
- ビットコインとS&P500の相関は直近1年で0.50。近年は上昇傾向にある(2020-21年:0.28前後→2025-26年:0.43〜0.52)
- S&P500が急落した日、ビットコインも86.8%の確率で同時にマイナスだった(平均-4.05%)
- 「分散のために持つ」という理由づけは、以前より根拠が弱くなっている。持つなら別の理由が要る
“分散になるから”以外の理由が自分にあるか、一度考えてみてください。
※本記事は公開情報および統計データに基づく情報提供を目的としたものであり、特定の暗号資産や金融商品の購入・売却を勧誘するものではありません。 ※暗号資産は価格変動が大きく、元本は保証されません。投資判断は必ずご自身の責任で行ってください。 ※相関は過去のデータに基づくものであり、将来の値動きを保証するものではありません。 ※記載の数値は2026年8月2日時点のデータに基づきます。最新情報は各公式サイトをご確認ください。 ※取引は金融庁に登録された暗号資産交換業者をご利用ください。


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